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歴代受賞パターン分析

公式サイトの受賞記録(2021–2025・全442作品)と、公式YouTubeアーカイブ13本の書き起こし分析から、グランプリ(都知事杯)に共通する条件と、応募が集中しているのに受賞ゼロの「飽和テーマ」を読み解きます。主張には出典を明記しています。

リソースハブ / 受賞パターン分析

01 — Timeline

歴代グランプリ(都知事杯)受賞作 2021–2025

最優秀賞・都知事杯の名称は年度により変わっていますが、いずれも大会最高賞です。出典は公式サイト作品集ページと公式YouTubeアーカイブ。

2021

PECO navi TOKYO — ToDCS(戸田建設 × 三菱総研DCS)

建設現場の技能労働者数・昼食の嗜好を予測するアルゴリズムを構築し、需要が見込めるエリアをキッチンカー事業者にマッチングするWebサービス。現場の実データを取り込んだプロトタイプとしてデモ。

出典: 公式サイト 2021年度開催記録三菱総研DCS(チーム名はASR書き起こしで「GoodCS」と誤認識されていた経緯あり。正しくは ToDCS)
2022

上京物語 — Zガード

ライフスタイル・価値観を入力すると、AIが「住むべき街」を多様なオープンデータから推薦するWebサービス。副知事のツイート後、公開初日で5,000件超の登録があったと報告されている。

出典: 公式YouTube「都知事杯オープンデータ・ハッカソン2022 Final Stage&表彰式」、公式サイト 2022年度開催記録
2023

支援みつもりヤドカリくん — proj-inclusive × 一般社団法人防窮研究所

複雑な社会保障・給付金制度をコード化して試算するLINE bot。実際に受給につながった事例と、3年間の実証パイロットが報告されている。

出典: 公式サイト 2023年度開催記録GovTech東京 note(OpenFisca導入記事)
2024

リアルタイム高解像度 熱中症リスクダッシュボード — HITS(都知事杯/オーディエンス賞 W受賞)

PLATEAU 3D都市モデルで建物形状に由来する日陰を物理計算し、5mメッシュ・3時間ごとという高解像度でWBGT(暑さ指数)を算出・可視化。

2025

YORUMICHI(夜道/寄る道) — Aliss

犯罪認知件数・街灯位置・夜間光衛星データ・人流データ等を統合し、A*探索アルゴリズムで「明るく人通りが多い」安全な帰路をリアルタイムに提示。ハッカソン期間中に20件超の街頭インタビューを実施済み。現在 yorumichi.com で一般公開され、自治体との連携が進行中と報じられている。

02 — Common Patterns

受賞作に共通する2つのパターン

公式アーカイブ動画13本(2021–2025 First Stage / Final Stage / Demo Day)の書き起こし分析より。5年間、この2条件を外した作品がグランプリを取ったことは一度もありません。

A

新しい導出量を生成している

既存オープンデータの見せ方を改善するだけでなく、そこからこれまで存在しなかった量・指標そのものを計算・生成している。

  • HITS(2024): PLATEAU建物形状から日陰を物理シミュレーションし、5mメッシュ単位のWBGTという新しい暑熱リスク値を算出。既存ハザードマップの重ね合わせではない。
  • YORUMICHI(2025): 犯罪統計・街灯位置・夜間光衛星データという別々のデータを組み合わせ、「安全な夜道ルート」という新しい導出結果を提示。
B

発表時点で既に動いているトラクション

「今後こうします」という計画ではなく、発表の時点ですでに実績・反応が発生している。利用者、実地インタビュー、自治体連携など。

  • 上京物語(2022): 副知事のツイート後、公開初日で5,000件超の登録。
  • 宿かり君(2023): 実際の受給者事例、3年間の実証パイロット契約。
  • YORUMICHI(チームAliss、2025): ハッカソン期間中に20件超の街頭インタビューを実施し、当事者の声を発表に組み込んだ。現在は yorumichi.com として本稼働、自治体との連携が進行中。

出典: 公式YouTubeアーカイブ(2021–2025年の First Stage / Final Stage / Demo Day 計13本)の書き起こし分析。自動書き起こしに基づくため、固有名詞・数値は公式サイトの記載を優先してください。

03 — Red Ocean / White Space

応募クラスタの飽和度 — レッドオーシャンとホワイトスペース

過去5年・442作品をキーワードでクラスタ分類した集計(1作品が複数クラスタに重複計上される場合あり)。応募数が多いテーマほど受賞しやすいわけではありません。

読み方。行政業務効率化(85件)・交通移動(54件)・子育て(36件)・観光(21件)の4クラスタだけで延べ196件、全応募の4割超を占めますが、この4クラスタに分類された作品の中に過去5年のグランプリ(都知事杯)受賞作は1件も含まれていません。歴代グランプリ5作品はいずれも、このキーワード自動分類では「その他」(クラスタ非該当)に振り分けられています。一方、件数では大きく劣る「暑熱」クラスタ(13件)からは2024年グランプリのHITSが出ています。応募が多いテーマは審査員の目にも「またこのパターンか」と映りやすく、件数の多さそのものが不利に働く可能性がある、という読み方ができます。
クラスタ件数(延べ)グランプリ受賞数
行政業務効率化850
交通・移動540
子育て360
防災・水害310
観光210
暑熱131(HITS, 2024)
3D・PLATEAU・デジタルツイン120

出典: 公式サイト作品集 odhackathon.metro.tokyo.lg.jp/collection/ 全442件を集計し、タイトル・要約へのキーワードマッチで分類(当サイト作成者による独自集計)。要約が掲載されていない旧年度作品は分類漏れがある点に留意してください。

04 — Division Track Record

部門の実績(2024–2025)

2024年度から「サービス開発」「ビジュアライズ」「アイデア提案」の部門制が導入されました(2025年度はここに学生賞が追加)。

年度都知事杯(グランプリ)サービス開発部門賞ビジュアライズ部門賞アイデア提案部門賞
2024 HITS(熱中症リスクダッシュボード) みえるーむ(activecore) 4689(東京都地価データビジュアライズ) ホントーの乗り換え案内(MINKAI)
2025 Aliss(YORUMICHI) CareHub Tree Debuggers(マツ枯れ・ナラ枯れ) IceBreaker(ナラティブ・ポリシー・アドバイザー)

両年とも、都知事杯(グランプリ)は「サービス開発」部門に応募していた作品(2024 HITS/2025 Aliss)が獲得しています。同じサービス開発部門の「部門賞」自体は同年内の別作品(みえるーむ/CareHub)に授与されており、グランプリは部門賞との重複受賞ではなく、部門を横断して選ばれる上位の総合賞という位置づけです。一方、ビジュアライズ部門・アイデア提案部門の受賞作は、2024・2025のいずれの年もグランプリには届かず、部門賞止まりとなっています。

出典: 公式サイト作品集の受賞リスト、東京都報道発表資料、および事務局公式note(note.com)。

05 — 2026 Judging Criteria

審査基準は2026年から5基準

2026年度の募集要項に明記されている審査基準を、そのまま引用します。重みづけや優先順位についての推測は含みません。

📊

1. データ活用

サービスにおいてオープンデータや民間データ等を有効活用しているか。

💡

2. アイデア力

都民の課題・問題意識の解消、希望・期待の実現に向けたアプローチ手法やアイデアが秀逸で、サービスとして成立しているか。

🛠️

3. 技術力

技術難易度が高い、技術要素(アーキテクチャやAI等)に合理性がある等、技術力が確かで完成度も高いサービスであるか。

🌏

4. ソーシャルインパクト

手取り時間の増加等、都民のQOL向上に貢献するような社会的インパクトがあり、実現可能性が高いサービスとなっているか。

🧩

5. サービスデザイン(新設)

利便性や満足等、都民目線での価値を持続的に提供できるサービスとなっているか。2026年度から新設された評価軸です。

出典: 都知事杯オープンデータ・ハッカソン2026 公式募集要項(odhackathon.metro.tokyo.lg.jp/recruitment/)記載の審査基準を原文引用。

06 — Common Misconceptions

よくある誤解

「技術力が高ければグランプリに届く」

技術的な高度さは単独では部門賞(技術賞)止まりになりやすい、というのが5年分の一貫した傾向です。2022年、IBM有志グループの「AI-thru」は自らのリリース期限を守れなかったにもかかわらず、審査委員特別賞(技術部門)を受賞しました。技術的な野心は評価されますが、グランプリには社会的な切実さ・トラクションとの組み合わせが求められています。

「オーディエンス賞を取れば勝ち筋が見える」

オーディエンス賞は視聴者投票による賞で、審査委員による審査基準とは判定の物差しが異なります。2025年大会では、審査委員が「オーディエンス賞受賞作は他のファイナリストと比べ当事者検証が薄かった」という趣旨のコメントをしたと報告されており、審査員は「オーディエンス賞は必ずしも審査基準上の厳密さを保証しない」という点を明示的に区別しています。

「動くプロトタイプさえ作れば差別化になる」

生成AIの普及により、2024年以降は「プロトタイプが動く」こと自体がもはや当たり前の水準になっています。GovTech東京CTOの井原正博氏は2024年、「生成AIによって、プロトタイプ開発は文字通り誰にでも到達可能になった」という趣旨の発言をしています。差別化の軸は、作れるかどうかではなく、課題定義の解像度と検証の深さに移っています。

出典: 公式YouTube「都知事杯オープンデータ・ハッカソン2024 Final Stage」、井原正博氏審査コメント(ASR書き起こしに基づく要約)。
本ページの分析は、公式サイトの受賞記録・公式YouTubeアーカイブ・公開記事のみを出典としています。審査員個人の重みづけ予測や2026年テーマの推測は一切含みません。数値・事実誤認に気づいた方はSlackでご連絡ください。